彼には冬の朝が似合う。
体を刺すような寒さが世界がここにあることを感じさせてくれるような。
そんな冬の朝が、彼にはよく似合う。
道
きりりと冷たい、肌を刺すような寒い朝でも彼はいつも鍛錬を欠かさない。
空気を切り裂く鋭い音。
彼が生む朝の静けさの中の一部。
一分の隙も無駄もない動き。
剣術はもちろん人を傷つけるものだけど、彼のそれは踊るようでとても美しい。
リズミカルだと油断していたらテンポを変えられ、
軽やかと思っていたらくぐもった重さを感じる音になる。
剣筋そのものが生きているように舞う。
それはまるで彼が今まで奪い、そしてこれから奪う命に捧げる鎮魂の舞。
彼の道は私たちの進む道とは少し違う。
必ず誰かの命を犠牲にしなければならない道なのだ。
人の命は死んでしまえばお終い。
しかし彼は志半ばで死んだであろう自分が命を奪った相手を生かしているのだ。
彼の心の中で。
彼の道を辿る道標として。
しかしそれは逆に永遠にその人たちの命を背負っていく事にもなる。
もちろんその道を選んだ時からその覚悟はあるだろう。
自分の命が尽きるときがその道の終着点だということも。
なんて強い人なんだろう。
何よりも優先すべきことがあって、それを揺るがせずに持っていられるなんて。
なんて弱い人なんだろう。
誰にも弱音を吐くことができず、こうして自分を戒めるしかできないなんて。
そしてそれに気づくことさえできないなんて。
だからこそ、私はそばにいよう。
彼が決して迷わぬよう。
自分の痛みに気づけない彼に代って、その傷に触れて、癒せるよう。
そばにいるよ。
あなたの道は私が記録するから、その荷をおろしてと。
「毎日毎日御苦労様。毎日同じことの繰り返しでよく飽きないわね。」
彼が一息ついたところをすかさず私は話しかけた。
30分以上その機会を狙っていただろうか?
飽きないのは私のほうだ。
毎日同じように彼を見て、同じように声をかけるのだから。
色んなことを考えるのだけれども、結局口に出るのは同じようなことばかり。
魔女とも呼ばれる私が、緊張するなんて笑ってしまう。
「うるせぇ。文句があるなら見なきゃいいだろうが。」
いちいち本気にして少しふてくされる彼をみて安心する。
あぁまだ彼はこっち側にいるのだ。まだ手は届く。帰ってこれる。と。
「まぁ昼間寝てばっかでなまって戦えませんでしたよりはましよね。
さ、終わったならその汗流してきちゃいなさいよ!」
まただ。
この口からは憎まれ口しか出てこない。
私は意地っ張りで、素直なことばはでてこなくて。
もうどうしようもなくて…。
「言われなくてもそうするところだ。ちょっとは…」
彼の言葉を遮ったのは私。
風呂場に向かう彼を後ろから突然抱きしめたから。
「…汗が移るぞ。」
「いいのよ、こうしていたいんだから。」
癒したいと思うのは私のエゴなんだろうか。
でも、そうしたいほどに私は彼を愛しているから。
愛おしい。
自分を愛せない彼を愛するのは私の役目だと思ってしまった時から。
たとえ彼の道中に私は必要ないとわかっていても。
観念したように彼はため息をつき、体を回し、向き合って私をそっと抱きしめた。
そして片方の手でさらさらと私の髪の毛を梳く。
「冷えてんじゃねぇか。」
「寒いもの。きっと冬島の気候領域に入ったのね。」
「じゃあルフィが大喜びだな。」
「そうね、チョッパーも喜ぶ。」
「…疲れてんなら言えよ。お前が倒れちゃあこの船は進めねぇ。」
「もう倒れないわよ、ずっと導いていくわ…。」
この船の行く先に。
あなたの道末に。
ずっとずっと。
---------------------------------------------------------------------------------------------------
あとがきという名の反省
初めてのSSです。
572の8割はゾロナミでできてるんです。
も~ナミさんがゾロのこと好きで好きでたまらないんですよ。
でもゾロは自分のこと好きじゃないと思ってて。
構ってほしいけど邪魔できないみたいな。
まぁゾロ助はすごくナミさんのこと好きなんだけど態度に出さないだけで。
周りもそのこと気づいてるのにナミさんだけ気づいてないみたいな。
そんなんが萌えます。
572
空気を切り裂く鋭い音。
彼が生む朝の静けさの中の一部。
一分の隙も無駄もない動き。
剣術はもちろん人を傷つけるものだけど、彼のそれは踊るようでとても美しい。
リズミカルだと油断していたらテンポを変えられ、
軽やかと思っていたらくぐもった重さを感じる音になる。
剣筋そのものが生きているように舞う。
それはまるで彼が今まで奪い、そしてこれから奪う命に捧げる鎮魂の舞。
彼の道は私たちの進む道とは少し違う。
必ず誰かの命を犠牲にしなければならない道なのだ。
人の命は死んでしまえばお終い。
しかし彼は志半ばで死んだであろう自分が命を奪った相手を生かしているのだ。
彼の心の中で。
彼の道を辿る道標として。
しかしそれは逆に永遠にその人たちの命を背負っていく事にもなる。
もちろんその道を選んだ時からその覚悟はあるだろう。
自分の命が尽きるときがその道の終着点だということも。
なんて強い人なんだろう。
何よりも優先すべきことがあって、それを揺るがせずに持っていられるなんて。
なんて弱い人なんだろう。
誰にも弱音を吐くことができず、こうして自分を戒めるしかできないなんて。
そしてそれに気づくことさえできないなんて。
だからこそ、私はそばにいよう。
彼が決して迷わぬよう。
自分の痛みに気づけない彼に代って、その傷に触れて、癒せるよう。
そばにいるよ。
あなたの道は私が記録するから、その荷をおろしてと。
「毎日毎日御苦労様。毎日同じことの繰り返しでよく飽きないわね。」
彼が一息ついたところをすかさず私は話しかけた。
30分以上その機会を狙っていただろうか?
飽きないのは私のほうだ。
毎日同じように彼を見て、同じように声をかけるのだから。
色んなことを考えるのだけれども、結局口に出るのは同じようなことばかり。
魔女とも呼ばれる私が、緊張するなんて笑ってしまう。
「うるせぇ。文句があるなら見なきゃいいだろうが。」
いちいち本気にして少しふてくされる彼をみて安心する。
あぁまだ彼はこっち側にいるのだ。まだ手は届く。帰ってこれる。と。
「まぁ昼間寝てばっかでなまって戦えませんでしたよりはましよね。
さ、終わったならその汗流してきちゃいなさいよ!」
まただ。
この口からは憎まれ口しか出てこない。
私は意地っ張りで、素直なことばはでてこなくて。
もうどうしようもなくて…。
「言われなくてもそうするところだ。ちょっとは…」
彼の言葉を遮ったのは私。
風呂場に向かう彼を後ろから突然抱きしめたから。
「…汗が移るぞ。」
「いいのよ、こうしていたいんだから。」
癒したいと思うのは私のエゴなんだろうか。
でも、そうしたいほどに私は彼を愛しているから。
愛おしい。
自分を愛せない彼を愛するのは私の役目だと思ってしまった時から。
たとえ彼の道中に私は必要ないとわかっていても。
観念したように彼はため息をつき、体を回し、向き合って私をそっと抱きしめた。
そして片方の手でさらさらと私の髪の毛を梳く。
「冷えてんじゃねぇか。」
「寒いもの。きっと冬島の気候領域に入ったのね。」
「じゃあルフィが大喜びだな。」
「そうね、チョッパーも喜ぶ。」
「…疲れてんなら言えよ。お前が倒れちゃあこの船は進めねぇ。」
「もう倒れないわよ、ずっと導いていくわ…。」
この船の行く先に。
あなたの道末に。
ずっとずっと。
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あとがきという名の反省
初めてのSSです。
572の8割はゾロナミでできてるんです。
も~ナミさんがゾロのこと好きで好きでたまらないんですよ。
でもゾロは自分のこと好きじゃないと思ってて。
構ってほしいけど邪魔できないみたいな。
まぁゾロ助はすごくナミさんのこと好きなんだけど態度に出さないだけで。
周りもそのこと気づいてるのにナミさんだけ気づいてないみたいな。
そんなんが萌えます。
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△ 初めましての挨拶はどこか恥ずかしいですね。 * HOME *